治療計画では「半年ほどで完了」と説明されていたのに、通院を重ねるうちに予定が延び、このまま終わるのか不安になっていませんか。仮歯のまま過ごす期間が長くなると、噛み合わせや見た目への心配も膨らんでいくものです。実際にインプラント治療は、骨や歯ぐきの状態によって進み方が変わる治療であり、期間が延びること自体は珍しいことではありません。本記事では、サージカルガイドを用いた精密な計画のもとでも期間が延びる具体的なケースを、当院の診療体制も交えて正直にお伝えします。
インプラント治療の期間は下顎3か月・上顎6か月が目安です

インプラント治療は、手術後にインプラント体と顎の骨がしっかり結合する期間を経てから人工歯を装着する治療です。この結合(オッセオインテグレーション)を待つ時間が治療期間の中心を占めるため、他の歯科治療より長めにかかる点は事前に理解しておく必要があります。
治療の流れは検査→手術→治癒→装着の4段階で進みます
初診の検査・診断、インプラント体の埋入手術、骨との結合を待つ治癰期間、そして人工歯(上部構造)の装着という順で進みます。当院では初診時にCTと光学スキャナーiTero5Dで精密な検査を行い、シミュレーションソフトとサージカルガイドを用いた治療計画を立ててから手術に入ります。
オッセオインテグレーションの完成を待つ期間が中心になります
骨質が比較的しっかりしている下顎と、骨が薄く血流が多い上顎とでは、結合を待つ期間に差があります。J-STAGEに掲載された報告でもデンタルインプラントは義歯に比べ機能的・審美的回復が可能になってきたが,治療期間の長さがリスクとしてあげられると指摘されており、期間の長さは治療の特性として織り込んで考える必要があります[1]。
| 部位・状況 | 治癒期間の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 下顎(骨質が良好な場合) | 約2〜3か月 | 骨密度が比較的高く結合が早い傾向 |
| 上顎(骨質が柔らかい場合) | 約4〜6か月 | 血流が多く骨質がやわらかいため長めに設定 |
| 骨造成を伴う場合 | 上記に数か月加算 | 新生骨の安定を待つ期間が別途必要 |
通院回数や具体的なスケジュールは症例ごとに異なります
治療期間中の通院回数は、手術内容や経過観察の頻度によって変わります。通院の目安についてはインプラント治療、何回通えばいいの?通院回数と期間の目安で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。
サージカルガイドを使っても骨や感染の状態で期間が延びます

サージカルガイドは、事前のCTデータとシミュレーションに基づいて埋入位置・角度・深さをあらかじめ設計する治療計画上の道具です。ただし、これはあくまで「計画通りに進めるための補助」であり、骨の質や感染の有無そのものを変える力はありません。想定と異なる所見が手術中や治癒期間中に見つかった場合は、計画を修正する必要が生じ、結果として期間が延びることがあります。
サージカルガイドは位置・角度・深さを再現する設計図です
当院では光学スキャナー「トリオス」による精密な歯型採取とCTデータをもとにサージカルガイドを作製し、外科処置専用のオペ室で手術を行っています。J-STAGEに掲載された手術時間に関する調査では、インプラント体埋入手術の手術時間に強く影響を与える説明変数は,埋入本数と骨造成処置であったと報告されており、埋入本数や骨造成の有無が処置全体の見通しに影響することが示されています。
想定と異なる骨質が見つかると計画の修正で期間が延びます
ガイド作製時のCT画像では骨の外形は把握できますが、実際に骨に触れてみるまで骨質(硬さ・血流の状態)の細かな違いまでは完全には分からないことがあります。骨が予想より軟らかい、あるいは薄いことが手術中に判明した場合は、埋入する本数や位置、荷重をかける時期を見直し、結合を待つ期間を長めに設定することがあります。
インプラント周囲炎などの感染が起きると装着が先送りになります
治癒期間中に清掃状態が不十分だったり、糖尿病など全身疾患の影響で治りが遅れたりすると、インプラント周囲に炎症が起きることがあります。日本歯周病学会口腔インプラント委員会の報告では、インプラント周囲炎発症のリスク因子として歯周炎の既往,喫煙,糖尿病,プラークコントロールの不良について調査したとされており、これらの要因が重なると消炎処置が必要になり、上部構造の装着までの期間が延びることがあります[3]。当院では持病がある方の手術時に生体モニタリング装置で容態を確認しながら進め、感染リスクの管理に努めています。術中・術後の痛みや感覚についてはインプラント手術って痛い?麻酔中の感覚と術後の経過を正直に説明でも解説しています。
骨造成が必要な場合は治癒を待つ期間が数か月加わります
歯を失ってから時間が経つと顎の骨は徐々に痩せていくため、インプラントを支えるための骨の幅や高さが不足しているケースは少なくありません。この場合はGBR法などの骨造成処置を行い、新しい骨が安定するまでの治癒期間が別途必要になります。
骨の幅や高さが足りない場合はGBR法などで骨造成を行います
骨造成は人工骨や自家骨を使って骨の量を増やす処置です。J-STAGEの報告でもインプラント埋入にあたり骨量が十分に確保できない場合,骨造成は長期間にわたりインプラントを機能的,審美的に安定させるための必要不可欠な処置となると述べられており、審美性や長期的な安定を重視するほど、骨造成にかける時間の重要性が増します[2]。当院では骨造成を含むインプラント治療にCT・シミュレーションソフト・サージカルガイドを組み合わせて対応しています。
新生骨が安定するまで数か月の治癒期間を待ちます
骨造成の規模が大きいほど、治癒を待つ期間は長くなる傾向があります。実際にJ-STAGEに掲載された症例報告では、腸骨内板よりブロック骨を採取して,高度に吸収した上顎欠損部に骨造成を行った.8か月後,同部にインプラント埋入術を行い,さらに7か月後に二次手術を行ったという経過が示されており、骨の状態によっては1年以上の期間を要することもあります[5]。もちろんこれは大規模な骨造成を伴う一例であり、すべての患者様に当てはまるものではありません。
糖尿病などの全身疾患がある場合は経過確認を重ねながら進めます
高血糖の状態が続くと傷の治りが遅くなりやすいため、全身疾患がある方は主治医と連携しながら血糖コントロールの状態を確認し、治療スケジュールを慎重に組み立てます。費用面で骨造成が追加になると負担も変わってくるため、インプラントの費用、1本いくらかかる?内訳と負担を減らす方法もあわせてご覧いただくと、見通しを立てやすくなります。
まとめ
- インプラント治療は骨との結合を待つ期間が中心で、下顎で約2〜3か月、上顎で約4〜6か月が目安です
- サージカルガイドは位置・角度・深さを計画通りに再現する道具であり、骨質や感染までは制御できないため、想定と異なる所見があれば計画修正で期間が延びることがあります
- インプラント周囲炎などの感染が起きると消炎処置が必要になり、装着までの期間が先送りになる場合があります
- 骨の幅や高さが不足する場合はGBR法などの骨造成を行い、新生骨が安定するまで数か月〜それ以上の治癒期間が加わることがあります
- 当院ではCT・光学スキャナー・サージカルガイド・生体モニタリング装置を組み合わせ、指導医のバックアップ体制のもとで経過を確認しながら治療を進めています
治療期間の見通しが不安な方は、事前のシミュレーションを含めたご相談から始めることができます。八王子I’S歯科・矯正歯科はJR八王子駅南口すぐの場所にあり、年中無休で診療しており、平日は20時まで診療しておりますので、通院のペースについてもご相談いただけます。まずは初めての方へ(初診の流れ)をご確認のうえ、現在の骨や歯ぐきの状態を確認しながら、無理のない治療計画を一緒に考えていきましょう。
参考文献
[1] J-STAGE「インプラント体埋入手術の手術時間に影響を与える因子の検討」jstage.jst.go.jp
[2] J-STAGE「骨造成に関する骨移植材の特徴とエビデンスレベルの再考」jstage.jst.go.jp
[3] J-STAGE「インプラント周囲炎の診断・リスク因子・治療に関するエビデンスと今後の課題」jstage.jst.go.jp
[4] J-STAGE「抜歯即時インプラントの臨床的考察」jstage.jst.go.jp
[5] J-STAGE「腸骨内板からのブロック骨移植によりインプラント治療を行った1症例」jstage.jst.go.jp
